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iPhone 13のデュアルeSIMはもっと取り上げられてよい

ネットメディアの反応

iPhone 13では新たに「デュアルeSIM」がサポートされ、eSIMだけで(物理的なSIMカードを装着することなく)2回線を同時に利用できるようになりました。思ったよりも数は多くないという印象ですが、ネットメディアの記事でも「デュアルeSIM」が取り上げられ、概ね好意的に受け入れられているようです。日本でも大手の通信事業者からeSIMが提供されるようになりましたし、SIMカードからeSIMへの移行をほんの少し加速させるのではないでしょうか。

japanese.engadget.com

残念なのは、eSIMプロファイルを2つだけダウンロード・インストールして満足している記事が多く見受けられることです。「デュアルeSIM」なんだから、eSIMだけで2回線を同時に利用できることを確認すれば良いだろう。そう考えてのことだと思われますが、iPhone 13が実現した「デュアルeSIM」の注目すべきポイントは、(マニアの観点では)そこではありません。

今回Appleは、GSMA SGP.21で規定されている下記の要件によるプロファイル数の上限設定を、何らかの方法を使って飛び越えています。

EUICC6 At a maximum, only one Profile SHALL be enabled at any point in time.

「有効なプロファイルはひとつまで」の制限からの解放

検証のため、下記の4種類のeSIMプロファイルを契約してiPhone 13にダウンロードしてみました。ダウンロード手続きそのものに特筆すべきものは無く、また「どちらのeUICCにダウンロードしますか?」といったようなユーザーへの確認を求められることもありませんでした。「デュアルeSIM」だからといって、iPhone 13がeUICCを複数持っているとは考えにくいです。

この4種類のeSIMプロファイルの中から「デュアルeSIM」に利用する2つを選択する場合、その組み合わせは6通りあります。実際にその6通りを試してみましたが、下のスクリーンショットの在圏表示を見てわかるように、全ての組み合わせを問題なく選択することが可能です。試せてはいないですが、プロファイルの数を更に増やしたとしても、同じ結果になることが予想されます。

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Rakuten - IIJ
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Rakuten - Softbank
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Rakuten - Ubigi
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IIJ - Softbank
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IIJ - Ubigi
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Ubigi - Softbank

eUICCひとつあたり「同時に有効化できるプロファイルの数はひとつまで」という制限に縛られていては、(もしeUICCを4つ載せているならその限りではありませんが)これを実現することはできません。例えば、RakutenとIIJのプロファイルが同一のeUICCにダウンロードされている場合、従来の(というか現行の通常の)eUICCではその2つを同時に使用することはできません。「デュアルeSIM」だからといって、eUICCを2つ搭載すれば良いというわけではないということです。

GSMA SGP.21の現行仕様では実現できない機能を実装し、業界に先駆けてそれを商用化しているものと思われます。SIMカードレスに向かう流れはきっと進行してゆくことでしょうし、さすがはAppleといった感じです。